敷金なし物件だと退去時の費用相場はいくら? 契約時の注意点も解説!

「最近敷金なし物件を多く見かけるけど、退去時の費用相場はいくらだろう」「敷金なし物件を契約するときの注意点を知りたい」とお考えではありませんか? 敷金なし物件は、敷金を支払う必要がないことから、入居時の初期費用が安いのが大きなメリットですよね。しかし、敷金なし物件の退去時には、高額な原状回復費用やハウスクリーニング代などを請求されるなど、何かとトラブルになりがちなのも事実でしょう。まずは、敷金なし物件だと退去時の費用相場はいくらなのか、契約時にはどんな点に注意するべきかを理解することが必要です。

そこで今回は、敷金なし物件の退去時にかかる費用相場について詳しく解説します。

  1. 敷金とは?
  2. 敷金なし物件で借り主が退去時に負担する費用は?
  3. 本来なら貸し主が負担すべき部分は?
  4. 敷金なし物件の退去時にかかる費用相場
  5. 敷金なし物件の契約内容で注意したい点は?
  6. トラブルになった場合はどこに相談すべきか?
  7. 敷金なし物件の退去時にかかる費用相場に関するよくある質問

この記事を読むことで、敷金なし物件の契約時や退去時に注意すべきことがよく分かります。まずは、記事を読んでみてください。

1.敷金とは?

最初に、敷金とはどんなものか見ていきましょう。

1-1.入居時の保証金のような性質がある

敷金とは入居時に貸し主に支払うお金のことで、保証金のような性質を持つのが特徴です。たとえば、入居者が家賃を滞納したり物件を故意に破損させたりなどした場合などは、敷金から相応の金額を差し引くことになります。一般的には、家賃の1~3か月程度が敷金の相場です。

1-2.退去時には借り主に戻すべきお金

敷金は、本来なら退去時には借り主に戻すべきお金です。もちろん、1-1のような理由で金額を差し引かれることもあるでしょう。しかし、まったく戻らないというのはおかしな話です。退去時に敷金を返却してもらえなかったり、敷金では足りないと言われたりした場合は、正当な理由があるかチェックし、必要に応じて抗議しましょう。中には、不当な請求も多く、交渉するとあっさり返却してもらえることもあるので注意してください。

2.敷金なし物件で借り主が退去時に負担する費用は?

敷金なし物件を退去するときに借り主が負担すべき費用にはどんなものがあるでしょうか。

2-1.借り主の不注意による破損や汚損の補修費用

借り主の不注意による破損や汚損の補修は、借り主負担となります。

2-1-1.キッチン・トイレ・浴室などの水もれによる補修費用

キッチン・トイレ・浴室などの水もれによる補修費用は、借り主負担となります。特に、水を止めるのを忘れてしまったり、勢いよく出し過ぎたりして水もれを起こした場合は、過失責任を問われることでしょう。水もれはすぐに適切な処置をしないと、床や壁などが腐食する原因になります。補修範囲や内容によっては、数十万円以上の請求になることもあるでしょう。

2-1-2.床やカーペットのシミ汚れの補修費用

床やカーペットのシミ汚れを補修する費用は、借り主負担となります。たとえば、ワインやジュースをこぼしてしまったり、インクを落としてしまったりすることなどにより発生したシミ汚れは、借り主の過失によるものだからです。なお、シミ汚れが床板まで達している場合は大がかりな補修が必要になり、高額請求になることもあります。

2-1-3.子どものいたずらや落書きによる床や壁紙の補修費用

子どものいたずらや落書きにより、床や壁紙を破損もしくは汚損した場合も、補修費用が借り主負担になります。子どもに悪気がなくても、故意による破損や汚損と判断されるからです。いくら子どものしたことでも、補修費用を免除される理由にはならないので注意してください。

2-1-4.ドアや障子・網戸の傷や穴などの補修費用

ドアや障子・網戸の傷や穴などの補修費用も、多くの場合で借り主負担となるでしょう。ドアノブのメッキはがれやドア本体の色あせ、障子や網戸の劣化による色あせなどは、経年変化によるものであり、貸し主負担となります。しかし、傷や穴については借り主の注意不足によるものと判断されることから、補修費用を請求されてもおかしくありません。

2-2.契約違反による破損や汚損の補修費用

賃貸契約書での禁止事項を破ったことによる破損や汚損の補修費用も、借り主負担になります。場合によっては、契約違反による上乗せ請求をされることもあるでしょう。

2-2-1.タバコのヤニ汚れや焦げ跡による壁紙や床材の補修費用

禁煙物件でのタバコのヤニ汚れや焦げ跡の補修費用は、借り主負担となります。そもそも、タバコは生活必需品ではなく、あくまでもし好品です。喫煙可能物件であっても、ヤニ汚れや焦げ跡が発生しないように気を付ける義務があります。さらに、禁煙物件での喫煙したとなれば明らかに契約違反なので、補修費用やハウスクリーニング代を請求されても文句は言えません。

2-2-2.ペットの排せつ物汚れや臭いによる壁紙や床材の補修費用

ペットの排せつ物汚れや臭いによる壁紙および床材の補修費用も、全額借り主負担となります。特に、ペット不可物件にもかかわらず貸し主に内緒で飼っていた場合は、原状回復費用だけでなく、消臭・消毒費用なども上乗せ請求される可能性もあるでしょう。ペット不可を売りにしている物件にとって、内緒でペットを飼われることは重大な契約違反になります。ペット不可物件には、ペットアレルギーの人も住んでいる場合もあり、場合によっては貸し主が責任を問われることもあるからです。

2-2-3.貸し主に許可なくリフォームした場合の原状回復費用

貸し主に許可なくリフォームした場合も、原状回復費用は借り主負担となります。契約書に記載がないかぎり、物件の所有者である貸し主に黙ってリフォームしてはいけません。貸し主から原状回復するように言われれば、全額自己負担により元に戻す必要があるので、気を付けましょう。

3.本来なら貸し主が負担すべき部分は?

本来なら退去時に貸し主が負担して補修すべき部分を解説します。

3-1.経年変化による色あせやすり減り

経年変化による色あせやすり減りは、借り主に補修費用を請求できません。たとえば、壁紙の色あせや日焼け、床および畳の変色やすり減りなどです。相当に傷んでいる状態であっても、居住年数が長い場合は通常使用によるものと見なされて、補修費用を請求できないケースもあるでしょう。

3-2.壁に発生した画びょうの穴

壁に画びょうの穴が発生しても、一般的には貸し主負担での補修になります。壁にカレンダーをかけるために画びょうを打ったのなら、想定範囲内になるからです。ただし、画びょうを何度も押し込んだり、穴を広げるようにしたりした形跡がある場合は、借り主負担になることもあります。

3-3.家具の設置跡やへこみ

家具の設置跡やへこみは、貸し主負担での補修が原則です。日常生活を送る上で、家具を設置することは必要不可欠になります。故意に引きずったなどの行為が証明できない場合は、家具を設置しただけで跡が付いたりへこみが発生したりしても、借り主に責任を問うことはできません。

3-4.家電の裏側の壁に付いた黒いシミ

家電を置いた場合、裏側の壁に黒いシミができることがあります。家電を置いた場合にできる黒いシミも、貸し主負担での補修となるので覚えておきましょう。生活する際に、家電を使用するのは当然のことです。したがって、家電を置いたことにより裏側の壁が黒ずんでも借り主の責任ではありません。

4.敷金なし物件の退去時にかかる費用相場

敷金なし物件では退去時の費用相場がいくらになるのか、詳しく見ていきましょう。

4-1.退去時の費用相場は居住年数が長いほど安くなる

敷金なし物件でも、長く住むほどに退去時の費用相場が下がります。以下は、主な設備の耐用年数です。

  • キッチンの流し台:5年程度
  • 壁紙・カーペット・備え付けのエアコンなど:6年程度
  • 備え付けの家具などで木製のものなど:8年程度
  • トイレの便器・洗面台の給排水設備・備え付けの家具で金属製ものなど:15年程度

居住年数が長いほど設備の耐用年数が短くなり、退去時の残存評価額が下がります。したがって、退去時に請求される原状回復費用などの金額も少なくて済むのです。

4-2.退去時に行うハウスクリーニングの費用相場

退去時に行うハウスクリーニング費用相場は、部屋の広さや間取りに比例します。具体的には、以下を参考にしてください。

  • 1R~1K:15,000~30,000円
  • 1DK~1LDK:30,000~40,000円
  • 2DK~2LDK:30,000~70,000円
  • 3DK~3LDK:50,000~85,000円
  • 4DK~4LDK:70,000~100,000円

ただし、ひどいシミや汚れがある場合は、上記の相場に数万円程度上乗せされることもあります。

4-3.敷金なし物件で退去時の費用を支払った実例を紹介

敷金なし物件の退去時にかかった費用を、具体例を挙げて3つご紹介します。

4-3-1.家賃5万円の1K物件に4年住んだAさん

大学入学を機会に、家賃5万円の1K物件に4年間住んだAさんは、地元での就職に伴い引っ越しをすることになりました。自分ではキレイに使用していたつもりでしたが、退去時のチェックでキッチンの床に水もれがあることが発覚したのです。そのため、退去時の原状回復費用として、20万円を請求されてしまいました。敷金なし物件だったために、請求された金額を全額支払うことになったAさんは、学生時代の貯金がなくなってがっかりしています。

4-3-2.家賃7万円の1DK物件に1年住んだBさん

家賃7万円の1DK物件で念願の一人暮らしを始めたBさんは、敷金なしで初期費用がほとんどかからずに済んだことを喜んでいました。しかし、最寄り駅から遠いことが不便なため、1年住んだタイミングで退去することに決めたのです。Bさんは元からキレイ好きな性格であり、掃除もこまめに行っていたこともあって、ハウスクリーニング代として3万円請求されただけで終わりました。

4-3-3.家賃10万円の2DK物件に10年住んだCさん夫婦

家賃10万円の2DK物件に新婚当初から10年住んだCさん夫婦は、子どもが幼稚園に入るのを機会に、より広い物件に住み替えることにしました。しかし、敷金なし物件のため、退去時に多額の原状回復費用を請求されるのではと不安に感じていたのです。実際には、10年住んだために、多くの場所が経年変化による劣化と認められました。最終的にCさん夫妻に請求されたのは、子どもが壁に落書きした部分の補修費用を含んで約7万円でした。

4-4.退去時になるべくキレイに掃除することがおすすめ

退去時になるべくキレイに掃除をしておくと、ハウスクリーニング代の請求金額が安く済むことがあります。キレイに掃除してあると、業者がハウスクリーニングする手間が省けるからです。また、貸し主への印象もよくなるのもメリットでしょう。無用なトラブルを避け円満に退去するためにも、退去時には掃除を徹底して行うことをおすすめします。

5.敷金なし物件の契約内容で注意したい点は?

敷金なし物件を契約するときは、契約内容でいくつか注意すべき点があります。

5-1.原状回復特約の内容を確認する

敷金なし物件を契約するときは、原状回復特約の内容を細かくチェックしてください。原状回復特約とは、退去時の原状回復費用を一定の割合で借り主が負担することの取り決めです。一般的には、部屋の広さに比例して具体的な金額を示されることが多いでしょう。なお、単に「一定の金額もしくは割合を借り主の負担とする」と記載してあるだけでは不十分なので、具体的な金額を明示してもらう必要があります。

5-2.契約期間や入居条件の制限を確認する

敷金なし物件は、敷金あり物件と比較して契約期間や入居条件に特定の制限があるケースが多く見られます。たとえば、以下のような例です。

  • 契約後1年以下で退去するときは違約金の支払いが発生する
  • 契約更新の際に家賃1か月分の更新料が必要になる

初期費用が安くても、さまざまな契約条件を考えるとデメリットのほうが大きくなる場合もあります。敷金なしというメリットとそのほかのデメリットを比較し、契約するかどうかよく検討してみてください。

5-3.入居開始時の状態を撮影しておくと便利

退去時に貸し主との間でもめないためにも、入居開始時の状態を撮影しておくと便利です。たとえ小さな傷や汚れでも、すべて記録しておきましょう。証拠写真があれば、貸し主と交渉する際に、有利な展開に持ち込むことができます。なるべく問題点が分かりやすいように心がけ、何枚か角度や距離を変えながら数枚撮影することがおすすめです。撮影日時が分かるように、カメラの日付スタンプ機能などを使うと客観性がある証拠になります。

6.トラブルになった場合はどこに相談すべきか?

敷金なし物件の退去時にトラブルが起きた場合に、どこに相談すればよいか確認しておきましょう。

6-1.自治体の相談窓口

敷金なし物件で退去時にトラブルが起きたら、自治体の相談窓口を利用するとよいでしょう。自治体の専門職員に相談し、無料でアドバイスしてもらうことができます。一例として、東京都の相談窓口一覧を参考にしてください。

6-2.公的な第三者機関

公的な第三者機関に相談することもできます。たとえば、以下のようなところに相談してみるとよいでしょう。

貸し主が明らかに不当な請求や要求をしていると判断されたときは、間に入ってもらったり忠告してもらったりすることも可能です。

6-3.法テラス

敷金なし物件の退去時にトラブルが発生したときは、法テラスに相談するのもよい方法です。法律の知識に基づいて、解決方法の糸口をアドバイスしてもらえます。

法テラスの利用は無料ですが、法テラスで紹介された弁護士に対して正式に相談する場合は、1回数万円程度の相談費用がかかることがあるので注意しましょう。

7.敷金なし物件の退去時にかかる費用相場に関するよくある質問

最後に、敷金なし物件の退去時にかかる費用相場に関する質問に回答します。それぞれ参考にしてください。

Q.敷金なし物件には訳あり物件が多いと聞いたのですが?
A.確かに、古い・立地が悪いなどで、なかなか借り主が見つからない物件が多いのは事実です。敷金なし物件を借りるときは、敷金なしの理由をきちんとチェックする必要があります。

Q.敷金なし物件でも礼金を3か月支払うのは一般的?
A.一般的ではないでしょう。通常、礼金は敷金と同額か少なくなるものです。礼金は、借り主に返却されることはありません。退去時の請求費用と相殺されることもないので、無駄になるお金を多く支払うことになります。

Q.自己負担でリフォームしたのに原状回復費用を請求されるのは不当では?
A.賃貸契約書で貸し主の許可なくリフォームすることが禁じられている場合は、たとえ自己負担でのリフォームでも契約違反に当たります。したがって、原状回復費用を請求されても文句は言えません。

Q.敷金なし物件で孤独死が発生した場合の費用負担は誰になる?
A.借り主の遺族や賃貸契約書の連帯保証人が負担することになります。孤独死が発生した場合、借り主の故意によるものではないにしても、体液汚れなどの特殊清掃や消臭・消毒作業が必要です。また、孤独死が発生した場合、心理的瑕疵(かし)物件になることから、借り主の遺族や賃貸契約書の連帯保証人に対して多額の賠償請求が発生することもあるでしょう。

Q.賃貸契約書に「退去時の原状回復費用は借り主負担」とある場合でも拒否できる?
A.状況によります。経年劣化による色あせや傷みなどに対して原状回復費用を請求された場合は、拒否することは可能です。ただし、貸し主との話し合いがこじれることが予想されるため、なるべく第三者機関などに相談し、間に入ってもらうことをおすすめします。

まとめ

今回は、敷金なし物件で退去時の費用相場がいくらになるか詳しく解説しました。敷金なし物件は、入居時の初期費用が安いことが大きな魅力です。しかし、退去時に多額のハウスクリーニング代や原状回復費用などを請求されるトラブルが急増しており、大きな問題になっています。もしも、敷金なし物件を契約するのなら、初期費用の安さだけでなく、退去時のデメリットやリスクもきちんと理解しておくことが大切です。初期費用が多くかかっても、長い目で見れば敷金あり物件のほうがお得なことも多く見られます。賃貸物件を探すときは、敷金なし物件だけでなく、幅広くチェックしてください。