入居者が死亡した場合の原状回復は誰が負担する? 主な手順など解説

契約内容によって異なりますが、一般的に、入居者が退去する際は原状回復を行うことが義務づけられています。しかし、入居者が死亡した場合、原状回復の義務は誰が担うことになるのでしょうか。原状回復の内容はハッキリと定められていない部分もあるため、管理会社や大家とトラブルになる恐れもあります。トラブルのリスクを減らすためには、原状回復について知ることが大切です。

本記事では、入居者が死亡した場合の原状回復について解説しましょう。

  1. 入居者が死亡した場合、原状回復は誰の負担になる?
  2. 入居者が死亡したときの対応は?
  3. 入居者死亡時の原状回復の手順
  4. 入居者が死亡した場合、告知義務はある?
  5. 入居者死亡時の原状回復に関してよくある質問

この記事を読むことで、入居者が死亡した場合、原状回復が誰の負担になるのか分かります。気になっている方はぜひチェックしてください。

1.入居者が死亡した場合、原状回復は誰の負担になる?

入居者が死亡した場合、原状回復は一体誰の負担になるのでしょうか。

1-1.入居者の相続者が義務を負う

賃貸物件の入居者が死亡した場合、相続者が原状回復の義務を負うことになります。本当は入居者本人が原状回復を行わなければなりませんが、当の本人が亡くなっているので相続者である親族に移るというわけです。一般的に、入居者が死亡すると、管理会社または大家から連絡があります。連絡を受けて遺体を引き取り、退去日まで遺品整理をすることになるでしょう。相続者が責任を持つ流れが一般的ですが、1番困るのは相続者がいないことです。相続を拒否したり、家族がいなかったりする場合、とても厄介な状況になってしまうでしょう。

1-2.本人→保証人→保証会社→損保会社の流れ

入居者が亡くなったとき、誰に原状回復の義務があるのか順で追ってみると、本人→保証人→保証会社→損保会社の流れになります。まずは、亡くなった本人に支払い義務が生じるため、現金・預貯金または加入していた保険から降りることになるでしょう。亡くなった本人に支払い能力がない場合、連帯保証人に義務が移ります。ただし、最近は保証会社がいれば保証人なしでもOKという賃貸物件が多いため、保証会社に移るケースがほとんどです。物件のオーナーや不動産会社などが自主的に保険に入っていれば、その保険から支払われます。保険や補償がついていなかった場合は、大家さんや不動産業者が自ら支払うことになるでしょう。

2.入居者が死亡したときの対応は?

では、入居者が死亡したとき、どのような対応をすればいいのか具体的に説明します。

2-1.連帯保証人・緊急連絡先に連絡する

入居者が亡くなったら、契約書に記載されている連帯保証人または緊急連絡先に連絡します。基本的に、入居者が死亡した場合でも賃貸借契約は消滅しません。連帯保証人(相続人)に相続されることになるため、契約は続行します。相続人はその部屋にある家財・敷金の返却請求権・毎月の家賃債務も相続されることになるでしょう。だからこそ、素早く連帯保証人または緊急連絡先に連絡を取り、賃借権等の相続について取りまとめる必要があります。ただし、すべての相続人が相続放棄をした場合は、賃貸借契約は証明するので家財についても所有権が放棄されたことになるでしょう。

2-2.滞納賃料も相続人が承継する

何らかの請求が未払いであった場合、滞納している分も相続人が承継することになります。そのため、管理会社や大家さんは滞納分の家賃や未払い請求を相続人に対して請求と督促が可能です。そして、相続人も滞納賃料をきちんと支払う義務があります。しかし、前述したように、相続人全員が相続を放棄したり、家族がいなかったりする場合は、誰にも債務を請求することはできません。

2-3.安否確認のために警察へ連絡する

基本的に、賃貸物件のオーナーは入居者が住んでいる部屋のカギを勝手に開けて入ることはできません。何日も連絡がつかなかったり、家賃滞納の督促をしても返答がまったくなかったりする場合は、まず警察に連絡してください。「安否確認のために入りたい」といえば、警察の立ち会いで室内に入ることができます。このときのポイントで大切なのは、必ず警察官に部屋のカギを開けて先に入ってもらうことです。オーナーが先に入り死亡している状態を発見すると、オーナーが第一発見者になってしまい状況を説明しなければならなくなります。

3.入居者死亡時の原状回復の手順

それでは、入居者死亡時の原状回復における主な手順をチェックしましょう。

3-1.遺族と原状回復について協議を行う

まずは、入居者の遺族と原状回復について協議を進めることになります。今後の対応についてきちんと話し合うことで、スムーズに原状回復が進められるようになるでしょう。オーナーから遺族に原状回復を依頼することになりますが、原状回復のラインは不明確なものなのでトラブルになる可能性があります。原状回復にかかる費用を提示しても遺族が納得してくれないケースは結構多いのです。そのため、オーナーはなぜこの費用になるのか、具体的に説明することが大切なポイントとなります。ハッキリと説明を行えば、遺族も納得してくれるでしょう。

3-2.協議で取り決めた内容どおりに原状回復を行う

協議で取り決めた内容どおりに、遺族は原状回復を行わなければなりません。退去日までに室内をきれいに片付けて、入居したときの状態にするのが理想です。入居者が亡くなっている場合は、遺品整理を行うことになるでしょう。ものが大量にあるほど遺品整理に時間と手間がかかってしまうので、計画を立ててから始めるのがポイントです。退去日までに片付けてきれいにしなければ、家賃を支払うことになります。無駄な費用をかけないために、早めに原状回復を行ってください。遠方に住んでいる・自分たちで作業できないという方は、遺品整理業者に依頼するのも選択肢の1つです。

3-3.孤独死の場合はオーナーが原状回復を行う

孤独死の場合は、家族がいない方が多いので相続人がいません。そのため、賃貸物件のオーナーまたは管理会社が代わりに原状回復を行うことになるでしょう。孤独死の場合、次の入居者を見つけるのは大変ですが、原状回復をしなければ入居者を見つけることすらできません。原状回復をしない間、家賃収入を得ることができなくなるので早めに行ってください。費用はかかりますが、早めに原状回復を行えば家賃収入が安定する日も早く訪れるでしょう。

4.入居者が死亡した場合、告知義務はある?

ここでは、入居者が死亡した場合の告知義務について解説します。

4-1.亡くなったときの状況で変わる

正直なところ、入居者の亡くなったときの状況によって判断が変わります。たとえば、殺人や自殺で亡くなった場合は、物件周辺に警察やパトカーがたくさん来るため、ほかの部屋の入居者たちは不安な気持ちになるでしょう。その場合は、告知義務の有無に関わらず、オーナーとして入居者に何があったのかを説明しなければなりません。ほかの入居者たちを安心させるための告知となります。一方、自然死や病死で発見された場合は、そんなに大事に至らないケースがほとんどです。わざわざオーナーからほかの入居者に告知する必要はありません。あくまで個人の判断となりますが、入居者が安心して生活できるかを判断基準にするといいでしょう。

4-2.心理的な影響が大きい場合は告知義務が生じる

前述したように、告知義務はオーナー自身の判断となります。どんな基準で判断すればいいのか分からないという方が多いですが、1つの基準として「心理的な影響」に注目してください。自殺や殺人事件など事件性がある場合は心理的な影響が大きくなるため、告知義務が生じることになるでしょう。また、新しく部屋に入居する人に対しても告知することをおすすめします。人が亡くなった部屋は賃料が安くなる傾向がありますが、率先して住みたいという人はいません。なぜ賃料が安くなっているのか尋ねられたときは、嘘(うそ)をつかず素直に答える必要があります。後でトラブルにならないためにも、最初から素直に伝えることが大切なのです。

4-3.契約時に明確に説明しない不動産屋には要注意!

これまでオーナー目線で説明してきましたが、部屋を探している方に注意すべきポイントがあります。それは、不動産屋の対応です。事件性がある死亡の場合、告知義務が生じるのであらかじめ人が亡くなった場所だと理解しながら内見することになります。けれども、病死は自然死扱いになるので告知義務が生じません。相手から尋ねられなければ、不動産屋も大家さんも自分から告知することはないでしょう。周辺の賃貸物件よりあまりにも安い賃料の場合は、何かしらの理由があるので、事前に確かめてください。ほかより賃料を下げている理由をきちんと丁寧に説明してくれる不動産屋なら、安心して部屋を探すことができます。

5.入居者死亡時の原状回復に関してよくある質問

入居者死亡時の原状回復に関する質問を5つピックアップしてみました。

Q.原状回復の内訳は?
A.原状回復の主な内訳は以下のとおりです。

  • クロス剝がしおよび畳処分費用
  • 害虫対策費および養生費
  • 応急の原状回復をする間、車両の駐車場代
  • 入居期間中に紛失したカギの交換費用など

あくまで目安となるため、室内の状況などによって大きく異なります。原状回復の平均費用は約40万円ですが、場合によっては400万円以上になるケースもあるので要注意です。入居者の親族が原状回復を行う場合は、具体的にいくらになるのか管理会社や大家さんと話し合いましょう。

Q.相続放棄をする際の注意点は?
A.相続放棄をすると原状回復に支払う義務がなくなりますが、相続放棄をする前に遺品整理を行えば放棄できなくなるので要注意です。遺品整理を行った段階で、相続の意思があるとみなされてしまいます。相続放棄を検討している方は、遺品整理に手をつけないようにしましょう。また、相続放棄の手続きも必要になるので、具体的な内容が気になる方は自治体の窓口に相談するといいですよ。

Q.告知しないとどうなるのか?
A.入居者が自殺または殺人で死亡した場合、告知義務がオーナーに生じますが、告知しないと宅建業法違反になる可能性があります。宅建業法上、不動産を借りるか借りないかの「判断に重要な影響を及ぼす事項」について伝えなかったということになるからです。室内で人が自殺した場合、その事実は心理的瑕疵(かし)になるのできちんと告知事項を伝えなければなりません。

Q.親族やそのほかの人が遺体を発見した場合、大家の対処法は?
A.入居者の家族や友人などが発見した場合は、電話などで大家側に連絡が入ることになります。電話を受けた大家は、以下のポイントについて細かく聞かなければなりません。

  • いつ発見されたのか
  • 室内のどの場所で亡くなっていたのか
  • 死因は何か
  • 死亡が確認された場所
  • 死後どれくらい経過しているのか

以上の情報について、今後の賃貸運営や損害賠償の問題において大きく影響します。そのため、最初に電話を受けた時点で必ず確認し、メモに残すことが大切なのです。

Q.遺品整理業者に依頼するといくらぐらいかかるのか?
A.遺品の量や部屋の広さ・作業員人数によって異なるため、複数の業者に無料見積もりを依頼してください。あくまで目安となりますが、1Kで約5万円、1DKで約10万円になるでしょう。できるだけ、費用を抑えたい方は、買取サービスを行っている業者に依頼するのがおすすめです。遺品の中には、買取対象になるものもあるので買い取ってもらうことができれば処分費用の節約につながるでしょう。買い取ってもらえなかったものは、不用品回収が利用できるので手間と時間をかけることなくスピーディーに片付けることができます。

まとめ

入居者が死亡した場合、原状回復の義務を追うのは入居者の相続者といった身内です。血縁者が責任を持って原状回復をしなければなりませんが、入居者が孤独死をした場合は、管理会社または大家がその義務を追うことになります。孤独死が増えている今、原状回復についてトラブルになっているのが現状です。スピーディーに次の入居者を見つけるために、やっておくべきことがたくさんあります。しっかりと知識を心得ておけば、問題なく原状回復ができるでしょう。