中堅社員の育成における課題は? 育成方法とポイントを紹介

中堅社員の育成における課題は? 育成方法とポイントを紹介

中堅社員は、会社の将来を担う存在で、部下と上司の間を取り持つ大切な役割があります。ある程度仕事に慣れ、後輩の指導や同僚への積極的な働きかけ、そして上司の補佐など、たくさんの役割を担うことになるでしょう。しかし、実際は自分の担当業務に集中するあまり、周囲にまで意識が向いていない方が多いのです。現在、日本の多くの企業が、中堅社員の小粒化を問題視しています。中堅社員を育てるためには、問題点を理解しておかなければなりません。そこで、本記事では、中堅社員の課題と育成の重要性・育成方法について解説します。

  1. 中堅社員の課題は?
  2. 中堅社員の重要性は?
  3. 中堅社員の育成方法とポイント
  4. 中堅社員の課題と育成に関してよくある質問

この記事を読むことで、中堅社員の育成方法とポイントが分かります。悩んでいる方や、中堅社員を育成したいと考えている方はぜひチェックしてください。

1.中堅社員の課題は?

まずは、中堅社員が置かれている環境と現状を知り、よくある悩みと課題をチェックしましょう。

1-1.置かれている環境、現状を知ろう

管理職の補佐を行い、新人や若手社員を指導する立場にあるのが「中堅社員」です。一般的に、入社してから約6~10年経過した社員が中堅社員の立ち位置になるでしょう。上司と部下の間に立ち、橋渡しをする役割を担うのです。
そんな中堅社員が現在置かれている環境は、自身の役割が自覚しにくい傾向があります。なぜなら、採用人数が減り指導する後輩がいない、シニア社員がいるためにリーダーが明確になっていないからです。
また、現代の中堅社員となる30代の世代は、就職氷河期を乗り越えてきた優秀で学習意欲が高い人たちが多いですが、管理職候補としての育成を望まず、部下を育てる意欲が低い傾向があります。より安定して無理なく働きたいと思う人が多いからこそ、今以上の責任のある役職を臨まないのです。

1-2.中堅社員でよくある悩み

中堅社員で最も多い悩みは、仕事に対する知識・経験が不足していることです。「何年も仕事をしているのに、仕事をうまくまわせない」という悩みを抱える人が増加しています。自身の知識や経験が、勤続年数に見合っていないと感じ、自信がなくなるのです。これは、会社のサポート体制が整っていない点も理由に挙がるでしょう。新人の頃にきちんと教えてもらえなかった→後輩へ丁寧な指導ができないことにつながるのです。
また、業務量が多く時間が足りない、仕事中心の生活になるのが嫌という悩みもあります。中堅社員の業務範囲は幅広く、さまざまな役割を任されるようになるでしょう。業務量が増えるたびに時間がうまく使えず、残業したり休日出勤したりすることになります。毎日落ち着かず、精神的な負担も大きくなるでしょう。

1-3.どんな課題があるのか

より責任のある役職に就きたくない中堅社員が増えていますが、根本的にはキャリア形成をしたいという願望を持っています。その点を踏まえた上で、主な課題をいくつか紹介しましょう。

1-3-1.中堅社員の役割認識の改革

中堅社員の役割が明確ではない職場環境は、リーダーシップ開発に向きません。中堅社員の役割に対する意識を促すためには、リーダーのポジションを明確に与える職場環境が必要です。現在の職場環境を振り返らなければなりませんね。

1-3-2.変化に合わせた後輩指導

若手時代に先輩から手厚い指導を受けた経験が少ない中堅社員ほど、後輩指導に苦手意識を持つ傾向があります。また、若手世代の仕事観と学習スタイルの変化によって、後輩指導・育成が以前よりも困難です。時代の変化に合わせた後輩指導は、課題の1つになるでしょう。

1-3-3.モチベーションの向上

業務のマンネリ・組織の閉塞感や職場環境への不満・先行きの不安など、さまざまな要素が中堅社員のモチベーションを低下させています。どうすれば中堅社員のモチベーションを上げることができるのか考え、施策を立てることも課題の1つです。

1-3-4.問題解決力の向上

近年、多くの企業の業務が複雑化しています。マネジメント層だけでなく、中堅社員も自ら問題に立ち向かい原因を究明し解決していかなければなりません。周囲を動かす力が、中堅社員も求められるのです。

2.中堅社員の重要性は?

中堅社員は、会社や職場においてどのような役割を担うのでしょうか。ここでは、具体的な役割と重要性を解説します。

2-1.重要性は?

中堅社員は責任者・管理者ではありませんが、組織の中で大きな役割を担っています。たとえば、現場の中枢を担うことです。マネジメント領域に入る一歩手前の段階なので、管理職となる上司の仕事をサポートします。マネジメント業務の一端を担い、企業に必要不可欠な存在となるでしょう。
また、上司のサポートをしつつも後輩の育成を行う重要な立ち位置でもあります。後輩の指導を的確に行い、自分に続く中堅社員に育て上げなければなりません。いわゆる、中堅社員は上司と部下をつなぐ役割も担う立場と言えるでしょう。

2-2.会社への影響は?

中堅社員の育成は、今後の会社の運営に大きな影響を与えるでしょう。なぜなら、企業の将来を担う存在だからです。将来の管理職・リーダー候補となる中堅社員が活躍できる職場環境ほど、会社の売り上げも向上します。会社のためにも、中堅社員が自ら積極的に働く職場環境を作り、モチベーションを維持し続けなければなりません。業務がうまくはかどらない場合は、中堅社員の育成に問題があるケースも多いのです。

3.中堅社員の育成方法とポイント

それでは、中堅社員を育成するには、一体どのようにすれば良いのでしょうか。最初にすべきこと、育成方法とポイントについて解説します。

3-1.最初にすべきこと

まずは、適切な教育を行うために「対象」と「人材像」を明確にすることが大切です。中堅社員は教育を受ける「きっかけ」を探しています。そのきっかけを作るためには、教育対象と人物像をハッキリさせておかなければなりません。この2点が中途半端な状態では、教育の設計自体ができなくなります。誰を教育し、どのような人材像に仕上げるのか明確にした上で教育設計を練りましょう。
すでに、教育を行う対象と人材像が明確なら、その設定に適した教育方法と内容を考えてください。

3-2.具体的な例をピックアップ!

たとえば、個人としての能力を高める場合は、職種別の専門スキルに特化した研修や、管理職としての視点を植えつける研修を行います。何を目的としどんな研修を行うのか「対象」を明確にするのです。そして、どんな中堅社員に育てたいのか「人材像」もハッキリさせておきましょう。たとえば、職種別の専門スキルに特化した研修(対象)を行う場合は、「現場と組織のパイプ役」という人材像が(目的)となります。専門スキルを持つ中堅社員だからこそ、現場の声を受け入れやすく組織へ伝えやすいのです。

3-3.企業ができる取り組み

中堅社員育成のために、企業でできる取り組みはたくさんあります。たとえば、キャリアにつながるチャンスを提供することです。ステップアップのためのステージを企業や上司が用意すると、中堅社員のやる気ときっかけ作りに役立ちます。上司だけでなく、企業全体における取り組みが必要なのです。また、中堅社員に向けた研修もあります。次の項目で具体的な研修について解説しましょう。

3-4.どんな研修があるのか?

日々の業務から学ぶ仕組みをつくるのも大切ですが、学習ポイントが整理された研修を受けるのがベストな育成方法と言えるでしょう。前述したとおり、現代の中堅社員は手厚いサポートを受けてこなかった人が多い傾向があります。「何年も働いているからこれくらい分かるだろう」と考えるのではなく、改めて学習ポイントを押さえた研修が必要なのです。
たとえば、個人として能力を高める研修や、管理職に求められる要素を学ぶ研修などがあります。中堅社員として個々の能力を高める研修は、交渉術・プレゼンテーション術・ロジカルシンキングなど、基本的なスキルを高める内容です。幅広い業務をこなす中堅社員だからこそ、特定のスキルではなく基本的なスキルを高める研修内容のほうが好ましいでしょう。
これらの研修制度やサポートを、会社側が用意しなければなりません。研修制度とサポート体制を整えることで、中堅社員のモチベーションが上がり、学習に対して意欲的になります。

3-5.中堅社員の研修のポイント

3-5-1.中堅社員の立ち位置を理解させる

最初に述べたとおり、現在の中堅社員は自分の立ち位置や役割をしっかり認識していない問題点があります。そのため、中堅社員の立ち位置を理解させることが大切な育成ポイントです。自分がどの成長段階にいるのか理解できれば、これから先のキャリアアップも見えてきやすくなります。仕事に対するモチベーションが上がるきっかけになるでしょう。

3-5-2.キャリア形成の不透明感をなくす

「もっと自分に相応しい仕事があるのでは」「本当に何をしたいのかが分からない」など、現在の中堅社員の多くが、キャリア形成に対する不透明感を強く感じています。中堅社員としての立ち位置を理解させた後は、自分がこれから先どのように仕事をこなしキャリアを形成するのか考えられるようにならなければなりません。
また、キャリア形成は長期にわたる課程が必要です。現代のビジネス環境は、時代の変化にうまく取り込み柔軟に対応できる幅のあるキャリア展望が求められています。そのため、部署異動や配置替えなど、さまざまな業務に触れるきっかけを作りましょう。幅広い経験と知識を積み重ねることで、多種多様な変化に柔軟できる中堅社員を育てることができます。

3-5-3.上司側が意識づけと機会づくりを行う

中堅社員を育成するにあたり、上司の存在が大きなきっかけとなります。マネジメント業務に携わる中堅社員だからこそ、その意味づけと意識づくりが必要です。たとえば、キャリア形成とのつながりを示したり、可能性を一緒に考えたり、その可能性につながる機会を作りましょう。共に課題に取り組み、悩み、解決することで中堅社員も安心して次のステージへ踏み出すことができます。

4.中堅社員の課題と育成に関してよくある質問

中堅社員の課題と育成に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

Q.中堅社員の小粒化を放置するとどうなるの?
A.将来の会社を担う社員が少なくなり、運営が困難になるおそれがあります。また、ミドルマネジメントの弱体化につながるでしょう。ミドルマネジメントとは、組織の中間に位置する役職の総称です。上司の経営方針に基づきながら、現場の従業員をコントロールする大切な役職となります。ミドルマネジメントが弱体化すれば、仕事の効率が悪くなり、上司と現場の従業員とのやり取りがうまくいかなくなるでしょう。

Q.中堅社員の能力開発のポイントは?
A.職場環境の変化に踏まえた能力開発を行うことです。たとえば、職場における課題解決力を養うなら、今までの業務で培ってきたこと、または研修で学んだことをすぐに職場で使える環境を作ります。そのためには、実際の業務や職場の問題を取り上げなければなりません。職場で実践し役立つという実感が生まれれば、学んだことを積極的に生かそうとする意識も高まります。日々、職場は変化しているため、どのような状況なのか把握することが大切ですね。

Q.上司が心がけるべきことは?
A.特定の人だけでなく、1人1人の状況を把握する「広い視野」を持ちましょう。そして、それぞれにどのような仕事や役割を割り当てるか、誰と仕事をさせるか考えて判断する必要があります。適切な仕事を割り当てるためにも、1人1人の状況だけでなく技能も把握してください。中堅社員が自身の殻を破り、後輩の指導を積極的に行うためにも、上司がフォローしていくことも大切です。

Q.実際に行われた施策例が知りたい
A.ある出版関連企業では、役割認識の促進とリーダーシップの開発が実施されました。具体的には、集合研修や、リーダーシップ開発を促すワークショップの実施です。その結果、中堅社員の役割と能力開発の方針が明確になり、退職者が減少したと言います。

Q.中堅社員の研修を実施する際の注意点は?
A.研修を受ける中堅社員が、「何を求められているのか」「変えるべき点はどこなのか」をきちんと理解できる内容で研修を実施しなければなりません。研修を実施する側が、「中堅社員はこうあるべき」と決めつけるのはNGです。管理職としての視点を植えつけるなど対象を明確にし、それぞれの課題に適した研修を実施しましょう。

まとめ

いかがでしたか? 将来の企業を担う立ち位置にいる中堅社員は、会社内で重要な役割を担います。上司のマネジメント業務をサポートし、部下へ適切な指導を行うのが主な役割ですが、業務は多岐にわたるのです。仕事量が多いからこそ、常に視野を広く持っておかなければなりません。現在の日本は、中堅社員の小粒化が顕著に現れ、多くの企業が教育に力を入れ始めています。中堅社員の育成方法とポイントを把握し、企業の将来を担う人材へ育ててください。