サーバントリーダーシップとは?

サーバントリーダーシップとは? 特徴や導入するメリットを分かりやすく解説!

サーバントリーダーシップとは、使用人や召し使いを意味する「サーバント」とリーダーシップを組み合わせた造語です。日本語では「奉仕型指導」と訳されることもあります。従来の「自分についてこい」という指導型リーダーシップと真逆の考え方をするサーバントリーダーシップは、現在多くの企業から注目を集め、実践した結果業績が伸びたという実績も豊富です。

今回は、サーバントリーダーシップの考え方や実践している企業などを解説しましょう。

  1. サーバントリーダーシップの基礎知識
  2. 既存のリーダーシップとの違い
  3. サーバントリーダーに必要な10の特性
  4. サーバントリーダーシップを実践するメリット
  5. サーバントリーダーシップの導入方法
  6. サーバントリーダーシップを実践する際の注意点
  7. サーバントリーダーシップを実践している企業
  8. サーバントリーダーシップの関連書籍
  9. おわりに

この記事を読めば、サーバントリーダーシップについてよく分かります。興味がある人や、導入してみたいという人は、ぜひ読んでみてください。

1.サーバントリーダーシップの歴史

サーバントリーダーシップは、ロバート・K・グリーンリーフ氏によって1970年代に提唱されたリーダーシップの方法です。前述したように、リーダーが部下に対して奉仕しながら指導するという、従来のけん引型リーダーシップとは真逆の理論が、大いに注目を集めました。日本では、2010年代から注目を集め、現在は「日本サーバントリーダーシップ協会」も結成されています。ダイエーや、無印良品を展開する良品計画で実践され、成果をあげたことでますます有名になりました。

2.既存のリーダーシップとの違い

多くの人がイメージするリーダー象は、トップが「自分についてこい」と部下に指示を出し、けん引していくものです。一方、サーバントリーダーシップは、現場で働く人々にトップが奉仕をすることにより、従業員のモチベーションやトップへの人望を高め、指導していくやり方で、これは一見すると上司が部下にこびているように思われます。しかし、指導型リーダーシップを導入している企業に起こりがちな「現場の意見が上層部に全く採用されず、本当に必要なことを上司が理解しない」ということや、「失敗や責任を互いに押し付け合うだけ」という弊害が、起こりにくいのです。

また、上司が部下に奉仕することにより、現場の意見や部下の人柄を理解しやすく、導入した企業は業績が回復したり、よりアップしたりといった事例も珍しくありません。

3.サーバントリーダーに必要な10の特性

サーバントリーダーシップを行うには、以下のような特性が必要と言われています。

  • 傾聴:部下や顧客の意見に耳を傾け、仕事にどう利用するか考える
  • 共感:部下や顧客の立場に立ってものを考え、部下に自分の理想を押し付けない
  • 癒し:失敗を叱責するのではなく、解決方法を考える。部下の能力を引き出す努力を惜しまない
  • 気づき:物事を理屈で考えず、現在起こっている状況をよく見ることにより、気づきを得る。
  • 納得:部下に服従を要求せず、部下の了承を得ることで仕事へのモチベーションを高める
  • 概念化:自分が描いている成功のビジョンを相手に伝える
  • 先見力:現在起こっている出来事と過去の出来事を照らし合わせて、未来を予測する
  • 執事役:相手に利益を与えることを喜びと感じる
  • 人々の成長への関与:部下を育てることに努力を惜しまない
  • コミュニティづくり:人が成長するコミュニティを作る

どれもけん引型リーダーシップとは正反対の考え方です。

4.サーバントリーダーシップを実践するメリット

サーバントリーダーシップを導入すれば、現場で働く従業員1人1人の能力が引き出され、モチベーションが上がります。また、上層部も企業の現場で何が起きているのかを自分の目で把握し、対策を取ることができるでしょう。上層部の一部が暴走したり、現場の人間が失敗を恐れて責任を押し付け合うこともなくなります。逆に、言われる前に行動したり自分でより良い方法を見つけて働いたりといった変化も現れるでしょう。

5.サーバントリーダーシップの導入方法

サーバントリーダーシップを導入するには、まず実践する企業で上層部の考え方を変えることが必要です。現在は、サーバントリーダーシップを導入するためのセミナーなども実践されているので、それに参加してみてもいいでしょう。

「2-1」でご紹介した樋口泰行氏は、実際にダイエーの店舗を1つずつ訪れて従業員から話を聞いたり、全従業員を参加させて会議を開き、意見を求めたりしました。

けん引型リーダーシップになれた従業員や企業では、まず部下から意見を引き出すことが大変です。ですから、導入は一朝一夕ではできません。実施するリーダーには根気強さと忍耐力が求められます。

6.サーバントリーダーシップを実践する際の注意点

サーバントリーダーシップは、単に現場の従業員に優しく、無責任な上司にもなりやすいというデメリットがあります。ただ部下を甘やかし好きにさせるだけでなく、部下の考え方を聞きつつも、指導しなければなりません。

部下に好き勝手させるのは、サーバントリーダーシップではなく、無関心なだけです。サーバント(奉仕)とリーダーシップ(指導力)のバランスが取れるよう、上司に対する指導も必要になります。

7.サーバントリーダーシップを実践している企業

現在、サーバントリーダーシップを実践している企業といえば、資生堂・良品計画(無印良品)が有名です。特に、資生堂の相談役である池田守男氏は、サーバーメントリーダーシップに関する書籍を執筆したり、公演を行ったりしています。

また、ダイエーでサーバントリーダーシップを実践し、一時業績を立て直した樋口泰行氏は、その後日本マイクロソフトの会長を経て、2017年2月よりパナソニックの専務役員を務めている人物です。どの企業も順調な実績を出しており、これを見るだけでもサーバントリーダーシップの有効性が分かります。

8.サーバントリーダーシップの関連書籍

この項では、サーバントリーダーシップをテーマとしたおすすめ書籍を紹介します。

サーバントであれ ― 奉仕して導く、リーダーの生き方
著作:ロバート・K・グリーンリーフ  ・Robert K. Greenleaf ・‎ 野津智子 (翻訳)
出版社:英治出版

サーバントリーダーシップの提唱者であるロバート・K・グリーンリーフの小論集です。サーバントリーダーをについて詳しく知りたいという人は、まずこの本を読んでみましょう。

サーバントリーダーシップ入門
著作:金井壽宏・池田守男
出版社:かんき出版

日本でサーバントリーダーシップを導入した池田守男氏の著作です。日本の企業でサーバントリーダーシップを実践するためのマニュアルとしても有効ですので、自社に導入したいという人は、一読してみてください。

奉仕するリーダーが成果を上げる! サーバント・リーダーシップ実践講座
著作:真田茂人
出版社:中央経済社

サーバントリーダーシップを実践するための方法や実例が豊富に掲載されている本です。この中には、サーバントリーダーシップという言葉がなかった頃から、同じ考え方を実践している企業例も紹介されており、導入のマニュアル書としても有効でしょう。

9.おわりに

いかがでしたか? 今回はサーバントリーダーシップの特徴や導入するメリットなどを解説しました。けん引型リーダーシップを実践していたが、デメリットの方が大きいようだ、という企業は導入をしてみると業績がアップする可能性もあります。ただし、前述したように一朝一夕で人の考え方は変わりません。時間をかけて実践をしていくことが大切です。