遺言書の書き方で知っておくべきことは? 作成時のルールや相談先も

「遺言書の書き方を知りたい」という人は多いでしょう。近年増加している相続トラブルを避けるためにも、遺言書を作成しておくのがおすすめです。しかし、いざ書こうとすると「何をどのように書いたらよいのか分からない」「どんな効力があるのか?」と疑問に思うことも多いと思います。

この記事では、遺言書を作成する際のルールや書き方・相談先などを詳しくご紹介しましょう。

  1. 遺言書を作成するメリットは?
  2. 遺言書の種類を紹介
  3. 遺言書作成時に知っておくべきルール
  4. 遺言書の書き方は?
  5. 遺言書の作成について専門家に相談する場合
  6. 遺言書の書き方に関するよくある質問

この記事を読むことで、遺言書の正しい書き方や、法律上のルールなどが分かるはずです。ぜひ参考にしてください。

1.遺言書を作成するメリットは?

まずは、遺言書を作成するメリットにはどのようなものがあるのかをまとめました。

1-1.相続争いを防ぐことができる

遺言書を作成しておくことで、親族による遺産相続の争いを防ぐことができます。財産をどのように分配していくかを相続人同士で決めるのは大変なことです。意見が一致せず、もめ事になるケースも珍しくありません。時には、トラブルが大きくなり絶縁状態になってしまうこともあるのです。遺言書があればその内容に従って相続をすることになるため、こうしたトラブルは起こりにくくなるでしょう。

1-2.希望どおりに財産を分割できる

遺言書を作成することには、「自分の希望どおりに財産を与えられる」というメリットもあります。たとえば、内縁の妻や長男の妻など、法定相続人に当てはまらない人にも財産を分けることができるのです。また、「平等に分割するのではなく、よく世話をしてくれた長女に多く与えたい」などの希望も、遺言書があれば叶(かな)えられるでしょう。

1-3.相続人が遺産分割協議をしなくて済む

遺言書を作成しておくことは、相続人にとってもメリットが大きいでしょう。遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行わなければなりません。「遠方に住んでいるので集まるのが難しい」「話がまとまらないので何度も協議しなければならない」などの問題も出てくるでしょう。遺言書があれば、そのような相続人の手間や時間も省くことができます。

2.遺言書の種類を紹介

遺言書の種類には、以下のようなものがあります。

2-1.自筆証書遺言

自筆証書遺言は、その名のとおり遺言者が自筆で作成する遺言書のことです。誰でも手軽にできて費用がかからないこと・遺言書を書いたことを誰にも知られずに済むことなどがメリットでしょう。ただし、様式に厳格な決まりがあり、間違えて書くと遺言の内容が無効になってしまう恐れがあります。また、偽造されてしまう心配もあるでしょう。なお、自筆証書遺言は、開封する際は家庭裁判所の検認が必要になります。

2-2.公正証書遺言

公証人が遺言者から聴き取りした内容で作成するのが公正証書遺言です。2人以上の証人に立ち会いしてもらって作成し、公証役場で保管してもらいます。様式を間違えて無効になったり偽造されたりする心配はありません。その反面、費用がかかること・公証人と証人に内容を知られてしまうことなどがデメリットです。公正証書遺言の場合に限り、開封するのに家庭裁判所の検認は必要とされていません。

2-3.秘密証書遺言

秘密証書遺言は、自分で作成した遺言書を公証役場に持っていき、遺言書の存在を証明してもらったもののことをいいます。保管は公証役場に依頼できないため、自身での保管が必要です。ただし、保管者や遺族が遺言書を開封する際は家庭裁判所の検認が必要になります。

3.遺言書作成時に知っておくべきルール

遺言書を作成するにあたって知っておくべきルールをご紹介しましょう。

3-1.自筆証書遺言は財産目録以外パソコン不可

自筆証書遺言は手書きが原則ですが、2019年の相続法改正により、財産目録はワープロやパソコンでの作成が可能になりました。また、財産目録の代わりに登記簿謄本や通帳のコピーなどを添付することも認められたのです。ただし、財産目録以外は必ず自筆することがルールであり、代筆された部分があると遺言書が無効になってしまいます。病気などで自分で書くのが難しくなる可能性も考え、できるだけ元気なうちに作成しておくようにしましょう。

3-2.公正証書遺言は関係が近い人を証人にできない

公正証書遺言を作成する際は2人以上の証人が必要になりますが、遺言者と関係が近い人を証人にすることはできません。たとえば、相続人や相続人の妻・四親等内の親族などは証人になれないのです。また、未成年者や公証人の配偶者などを証人として作成した公正証書遺言書も無効になるため、注意してください。

3-3.作成日付が新しい遺言書が有効

遺言書が複数ある場合、作成日付が新しいものが有効になります。つまり、新しく遺言書を作成することで最初に作成した遺言書の内容を撤回することができるのです。ただし、撤回されるのは前後の遺言書で内容が矛盾している部分だけであり、そのほかの部分については最初に作成した遺言書が効力を有したままということになります。

4.遺言書の書き方は?

遺言書にはどのようなことを書くべきなのか、書き方について解説しましょう。

4-1.日付と署名・押印を忘れずに

自分で遺言書を作成する際は、必ず作成した日付を記載しましょう。「〇年〇月吉日」という書き方ではなく、正確な日付が特定できるようにしてください。また、遺言者の自筆による署名と押印も必要です。押印は実印でなく認印でも問題ありません。

4-2.遺留分に配慮して明確に意思を記載する

遺言書には、誰にどの財産を渡すかを指定できる効力があります。そのことが明確になるように、意思をしっかり記載しましょう。特に、遺留分には十分な配慮が必要です。偏った財産分割をして特定の相続人の遺留分を侵害するような内容の遺言書にしてしまうと、相続人間のトラブルに発展する可能性があります。また、法定相続人以外にも財産を渡したい相手がいる場合などは、しっかりとその意思を記載しておきましょう。

4-3.基本フォーマットに沿って作成するのがおすすめ

自筆証書遺言書を作成する際は、基本フォーマットに沿って作成することで誤りを防ぐことができます。相続人の氏名や相続の内容・口座番号・付言事項・作成した日付など、記載すべきことがまとまった基本フォーマットを参考にするとよいでしょう。遺言書作成用のフォーマットはインターネットからダウンロードすることが可能です。

5.遺言書の作成について専門家に相談する場合

遺言書の作成についての相談先や、相談を依頼する際の注意点などをまとめました。

5-1.状況によって相談先を選ぶのがおすすめ

遺言書の作成については、弁護士や司法書士・税理士・行政書士などの専門家に相談できます。不動産を含む遺言書は司法書士、相続税申告が必要な場合は税理士、相続トラブルが予想される場合は弁護士というように、遺言書の内容や状況によって相談先を選ぶべきです。また、ほかの専門家に比べて費用が安いため、「気軽に依頼したい」という場合は行政書士に相談するとよいでしょう。

5-2.専門家に相談するメリットは?

遺言書の作成について専門家に相談するメリットには、さまざまなものがあります。相続トラブルを防止するためのアドバイスをはじめ、ベストな遺言書を作成するための提案もしてもらえるでしょう。また、公正証書遺言書を作成する場合は、公証役場との打ち合わせを代行してもらうことも可能です。もちろん費用はかかりますが、悔いのない遺言書を作成するうえで心強い存在になってくれることは間違いありません。

5-3.相談する専門家を選ぶ際のポイント

相談先を選ぶ際には、以下のポイントをチェックするとよいでしょう。

  • 相続に関する知識や実務経験が豊富
  • 無料相談を受け付けている
  • 料金体系が明確である
  • 丁寧でスピーディーな対応をしてくれる

6.遺言書の書き方に関するよくある質問

「遺言書の書き方について知りたい」という人が感じるであろう疑問とその回答をまとめました。

Q.遺言書で保険金の受取人を変更することはできますか?
A.はい。遺言書にその旨を記載することで保険金の受取人変更が可能です。

Q.自筆証書遺言書はどのような紙を使って書けばよいでしょうか?
A.特に決まりはありませんが、できれば上質紙を使うのがおすすめです。

Q.夫婦で1つの遺言書を作成することはできますか?
A.いいえ。遺言書作成において共同遺言は認められていません。

Q.  専門家に公正証書遺言書の作成を依頼した場合、費用はどのくらいかかりますか?
A.10万~20万円前後が相場です。

Q.遺言書を作成すべきなのはどんな人でしょうか?
A.法定相続人以外に相続させたい人がいる場合や、相続人が大勢いる場合、会社を経営している場合などは遺言書を作成すべきです。

まとめ

遺言書を作成するメリットや作成する際のルールなどを詳しくご紹介しました。遺言書を作成するのは、相続トラブルを防ぎ、自分の希望どおりに財産を分割するために必要なことです。不安がある場合は早めに専門家へ相談し、悔いのない遺言書を作成するにはどうしたらよいのか考えてみるとよいでしょう。