【解説】無暖房住宅とは? 仕組みやメリットを知ろう。

省エネルギーという言葉が、住宅にも広がるようになってきました。太陽光発電、燃料電池システム住宅、パッシブ換気など、エコロジーを意識した地球にも優しく、人間の健康にもよく、光熱費の削減にもつながるさまざまな要素を持ったものです。
導入するためにはある程度の費用はかかっても、長い目で暮らしを見て、こうした省エネルギー設計を選択する方が増えています。
最近注目が集まっているのは、無暖房住宅です。いったい、どのようなものなのでしょうか?無暖房住宅についてご紹介します。

1.無暖房住宅とは?

多額な設備投資による省エネルギーとは異なり、比較的低予算で大掛かりな設備を必要とせず、効率よく快適な温度を保つ設計であるのが、無暖房住宅の特徴です。
具体的に無暖房住宅についてご紹介します。

1-1.スウェーデンが実用化

無暖房住宅が実用化されたのは、2003年のスウェーデンが先駆けです。以降、ドイツやカナダでも導入を開始。
無暖房住宅には、建物自体の気密性や断熱性を基準以上に確保することが重要視され、それに加えてガラスにも断熱効果が高いものを利用するなど、熱を逃がさない仕組みを基本としています。無暖房住宅の取り組みは、ドイツで急速に加速していて、2020年には新たに建築される住宅にはこのシステムを義務化すると決定されました。

1-2.自然エネルギーの活用

無暖房住宅の特徴として、自然エネルギーを存分に活用していることがあげられます。テレビ・冷蔵庫・電子レンジ・パソコンなどの家電製品や人の身体から発せられる生活熱、太陽からの熱を生かして、快適な温度を保つように設計されているものです。自然エネルギーを活用していることで、将来暖房設備の入れ替えなどの工事が必要ないといった、環境にも配慮された設計であるといえます。

2.無暖房住宅の仕組みについて

自然エネルギーを活用した無暖房住宅。地球にも人にも優しいのが特徴です。では、その仕組みはどのようになっているのでしょうか? 無暖房住宅の仕組みについてご紹介します。

2-1.冬でも暖房いらず

高い気密性と断熱性を持った住宅環境によって、熱を逃がしにくくしている無暖房住宅。熱を逃がしにくいだけではなく、蓄熱するのも特性です。日中太陽熱をたくさん取り入れて住宅を温め、夜に気温が下がってしまっても、蓄熱された熱を部屋の中に放出していくことで、部屋の温度が下がる速度を緩やかにします。こうすることで、冬でも暖房いらずの快適な空間を生み出すような仕組みを持っているといえるでしょう。

2-2.パッシブ住宅

蓄熱効果を生かして、冬でも暖房いらずの空間を作る無暖房住宅ですが、夏にもその性能を発揮しています。無暖房住宅においては、風通しのよい環境を意識して、風の通り道を計算されて作られているものです。パッシブ住宅とも呼ばれていますが、この設計を取り入れることで、自然な風の流れを利用した24時間換気システムを導入しています。高い気密性と断熱性に加え、この換気システムがあることで、室内表面温度と室温の差をなくし、快適な温度を保つように工夫されているものです。

2-3.徹底した気密性と断熱性

無暖房住宅の基本となるのが、高い気密性と断熱性です。この2つが揃(そろ)わなければ、無暖房住宅を実現することはできません。これに必要なのは、一般的な高気密と高断熱の基準を上回るトリプル断熱と3重構造の断熱ガラス、密閉性の高いサッシなどを取り入れることが大切です。
また、一般的な次世代省エネ住宅基準では1.6w/(m2・k)とされている断熱基準を表すQ値が、0.7w/(m2・k)以下の基準とされています。このQ値が低いほど、光熱費負担が軽減されると考えていいでしょう。無暖房住宅においては、次世代省エネ住宅の半分以下で済むという計算になります。

3.無暖房住宅のメリット

高い気密性と断熱性を持つ無暖房住宅の仕組みなどについてご説明しました。自然エネルギーを存分に活用し、環境にも配慮されている無暖房住宅ですが、そのメリットは具体的にどのようなものがあるのでしょうか?

3-1.温度にムラがない

無暖房住宅のメリットの一つは、室内環境での温度にムラがないということでしょう。一般的な住宅では、暖房を使っている部屋は暖かく、そうでない部屋はかなり冷え込んでいることが多いはずです。無暖房住宅では、そうした温度差をなくすように設計されていて、家中どこにいても同じ温度で過ごせる、快適な空間を実現しています。こうすることで、ヒートショックへの対策にもつながりそうです。

3-2.災害時でも安心

無暖房住宅では、常に一定の温度を体感することが可能です。もしも、極寒期に災害が発生しライフラインがストップしてしまっても、寒さに凍えるといった不安から解放されるメリットがあります。災害時の備えの一つとして、無暖房住宅を意識するのもいいかもしれません。

3-3.Co2削減

省エネルギー設計では、環境へ配慮されていることが大切です。冬でも、外壁が太陽光から受ける熱は35〜45℃といわれています。この太陽熱を生かして、室内を暖めているのが無暖房住宅です。天候が不順な日や夜間には、壁の中の集熱装置や地中の蓄熱槽にためられたエネルギーを使っています。自然エネルギーを活用することで、暖房にかかるランニングコストを限りなくゼロに近く減らせるものです。光熱費を減らすと同時に、Co2削減に大きく貢献できるメリットを持っています。人に対してだけではなく、地球にも優しい設計です。

3-4.快適な湿度を保つ

無暖房住宅は、過ごしやすい温度を保つことだけに注目されてしまいがちですが、湿度でも快適さを追求されています。高い気密性や断熱性を持つ住宅にありがちなのは、乾燥。空気が乾燥すると、ウィルスの繁殖が進み、風邪を引きやすくなる、のどが痛むなどのトラブルの原因にもつながります。
無暖房住宅では、冬の湿度を40〜50%程度に保つようになっており、トラブルが起こりにくい環境であるといえるでしょう。カビやダニが発生しにくいのもメリットです。

4.まとめ

無暖房住宅についてご紹介しました。いかがでしたか?
エコロジー設計や省エネルギーが注目されてきている中、自然エネルギーによる無暖房住宅が環境にも人にも優しいことがわかってきました。

  • 無暖房住宅とは?
  • 無暖房住宅の仕組みについて
  • 無暖房住宅のメリット

スウェーデンが先駆けとなって広まっている無暖房住宅は、自然エネルギーによって、暖房にかかるランニングコストゼロをめざすだけではなく、Co2削減にも大きく貢献しているものです。